論文感想 頸部骨折に対する人工物置換 セメントvsセメントレス

整形外科

転位型大腿骨頸部骨折に対する人工物置換 セメントvsセメントレス

近年高齢化とともに増加傾向である大腿骨頸部骨折は、診断されれば基本的には手術適応となる。
転位型に対しては、若年、活動性が高ければ骨接合を考慮することもあるが、基本的には人工物置換術の適応である。

人工骨頭置換術(BHA)、人工関節置換術(THA)が選択肢となるが、ステム固定の際にセメントを使用するかどうかについて、2021年のガイドラインでも提示された通り、インプラント周囲骨折の発生率などにおいて有利であるセメント使用が勧められるようになってきている。

論文紹介

2022/2 NEJM
Miguel A. Fernandez et al.
「Cemented or Uncemented Hemiarthroplasty for Intracapsular Hip Fracture」
https://doi.org/10.1056/NEJMoa2108337

60歳以上の大腿骨頸部骨折患者を対象とした他施設共同ランダム化比較試験。プライマリーアウトカムは4ヶ月後の健康関連QOL。EQ-5Dという質問票を用いている。今回はBHAのみである。

セメント群610例、セメントレス群615例。フォローアップできたのは71.6%。
EQ-5Dのスコアはセメント群0.371、セメントレス群0.315で有意差があった(12ヶ月時点での差はこれよりは縮まっていた)。
また、12ヶ月時点での死亡率(オッズ比0.80)、インプラント周囲骨折の発生率(オッズ比4.37)。
その他の合併症に関しては差がなかった。

感想

ガイドラインでも示されており、またその他海外での報告も多いので、セメント使用の優位性に関しては確立されたと考えて良いと思われる。

私自身数年前に整形外科になり、最初の病院ではセメントレスで人工骨頭置換を行っていたこともあって当初はセメントレスで行っていたが、2021年ガイドラインが出てからは少しずつセメントに移行していった。

ただ、他病院の知り合いに聞くとまだセメントレスで手術を行っている施設が多いように感じる。
そのほとんどが、セメント使用が推奨されていることは知っているにも関わらず、移行しきれていないようなので、セメント手技に慣れていない、使い慣れたインプラントからの変更に踏み切れていないという理由が多いと思う。特に頸部骨折手術は若手医師がメインで行うことが多いということがあるかもしれない。

頸部骨折はこれほどまでに症例が多くなってきており、今回の論文の結果でも示されているQOLの差やインプラント周囲骨折の発生率の差が医療経済に医療経済に与える影響も大きい。
1分でも早く手術を終わらせないといけないという症例でない限り(あまりないと思われるが)、また血圧低下や術中突然死などの合併症があることを理解した上で、セメント手技を習得していくべきであると思われる。

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