宇佐美選手、アキレス腱断裂
3月6日vs川崎フロンターレ戦、ちょうど現地観戦しており、この試合は後半ロスタイムになんとも言えない悔しい形での失点で勝ちがこぼれ落ちたという試合であった。しかしこの試合はガンバサポーターにとっては痛恨の引き分けと同じくらい、いやそれ以上にショッキングなことが起きた。
宇佐美がボールを受けて着地した時に崩れ落ちた。後半10分、一瞬何が起きたか分からなかったが、その後の痛がり方、他の選手の集まり方、スタジアム内の異様な雰囲気で、よくないことが起きたことはわかった。
しかし、その後担架で運ばれてピッチから出た時には、重傷であることを確信した。
3月8日にニュースが出て、診断は「アキレス腱断裂」。
前日の3月7日、受傷翌日に手術が行われたようだ。
「G大阪宇佐美貴史が右アキレス腱断裂で手術 6日の川崎F戦で負傷し途中交代、長期離脱へ」
アキレス腱断裂の基礎知識
アキレス腱は、下腿後方の腓腹筋、ヒラメ筋が合流し、踵骨とを繋ぐ腱のことであり、人体で最も大きな腱である。約1tもの牽引力にも耐えられるとされている。
アキレス腱断裂は大腱断裂の20%を占めるとされていて、推定発生率は、10万人あたり11-37人。男性の方が2-12倍多い。
受傷時の平均年齢は40歳程度、年齢分布は2峰性で25-40歳の患者に第一のピークがあって、スポーツなどで起こることが多い。第二のピークは高齢者で、そのほとんどが変性などが関係した低エネルギー外傷で起こる。
聞いたことがあるかもしれないが、受傷時は「いきなりアキレス腱を蹴られたような感じがした」「踵のところでブチッと音がなった」という感覚があり、疼痛とともに足関節の背屈が困難となり、歩行に障害をきたす。
〜 診断 〜
○まず病歴聴取から明らかなことが多い
・典型的には30-40歳代の患者が、走ったり跳んだりした時の急な疼痛、突然の歩行困難で受診する。
・足関節を背屈させた時に音がなったり、蹴られたような感じがするという訴えがあることが多い。
○身体所見
・トンプソンテスト陽性(うつ伏せで膝を直角に曲げて腓腹部をつかむ→足関節の底屈が見られない)
・アキレス腱断裂部の陥凹
・足関節底屈筋力の低下
・ゆっくりと動かすと足関節の背屈可動域が増加する
○画像診断
・主には臨床所見で診断し、画像所見はそれをそれを支持するもの。
・MRIや超音波が使用される。
・特に超音波は動的な検査であり、断裂の位置、断裂部の間隙、部分/完全断裂の特定に効果的。
参考文献)Park SH, et al. Treatment of Acute Achilles Tendon Rupture. Clinics in Orthopedic Surgery 2020;12:1-8. https://doi.org/10.4055/cios.2020.12.1.1.
また治療、手術法に関しては改めてまとめたいと思う。
Jリーガーのアキレス腱断裂
今回宇佐美選手の全治などは発表されていない。
概ね復帰まで5-7ヶ月を要することが多いが、実際にどのくらいで復帰できているのかを、これまでアキレス腱断裂の診断で手術となったJリーガーを振り返って確認した。
河井陽介選手(清水)2017/2/25受傷→2017/10/21ベンチ入り、10/29復帰 8ヶ月
寺田紳一選手(栃木)2018/2/14受傷→2018/11/11復帰 9ヶ月
吉田眞紀人選手(愛媛)2020/2/2受傷→2020/9/12復帰 7ヶ月
高杉亮太選手(栃木)2021/5受傷→引退 37歳
一部ではあるが、シーズン序盤にアキレス腱断裂した選手はやはり半年以上かかっていて大体7ヶ月くらいでの復帰となっている。
あとは有名なところでベッカム選手も、ACミラン在籍中、2010/3/14にアキレス腱を断裂している。それにより南アフリカW杯出場の夢は絶たれた。2010/9/11、約6ヶ月後に復帰している。
その他、プロ野球の前田智徳選手が、開幕1ヶ月後に受傷し、シーズンを棒に振ったり、大津祐樹選手やテニスのクルム伊達公子選手は受傷から復帰に半年がかかった。
このように半年以上かかることがほとんどである。
加えて、怪我が回復してリハビリプロトコールではスポーツ復帰が可能となったとしても試合復帰のための筋力回復にもう少し時間を要したり、反対側含めた再断裂がやはり起こりうる、手術創部感染などの合併症がある、などさらに離脱が長引く可能性もある。
宇佐美選手の場合、半年以上となると早くても9月ごろ。ちょうど30節が終わったくらいである。宇佐美選手本人のことを考えても1日でも早い復帰を期待したいが、離脱期間がかなり長いので、その他の選手のみで戦術を構築して勝ち点を拾い続けなければならない。
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